切り切りMme

自作の切り絵を紹介する

重なりへの試みー竜血樹①

ボスの作品に奇怪な絵がありますが、中でも「悦楽の園」はゾクゾクする程、見あきない作品です。最近知ったのですが、その中に描かれている奇妙な植物が現存するのだそうです。竜血樹という木です。種類は、大きく分けて二系統があり、インド洋の西端、紅海の入り口付近に浮かぶソトコラ島を原産地とするのと、アフリカ西岸に近い大西洋上のカナリア諸島を原産地とするドラゴがあり、ボスの描いているのは、ドラゴの方で、幹のくびれがレンコンのようにくびれています。それが、忽然とそびえている風景は、孤高の威厳が漂います。ソトコラ島のは、ガジャマルの木を天地ひっくり返して、上にブロッコリーを乗せたような巨木。それが岩のごつごつした斜面にぐいぐいと、キノコが生えるように乱立しています。今は、絶滅の危機に瀕しているそうです。両者とも、名前の通り、幹を切ると血が滴るように出てくるそうです。その樹液は竜血と呼ばれ、薬用や染料になるとかで輸出されてきたそうです。幹をカットした時に、こんな血の色の樹液が出て来るのを初めて見た人はさぞや驚いたことでしょう。

先日、新聞で「空師」という言葉が目に留まりました。まさに、その響き通り、空の中の師です。飛行士ではありません。朽ちかけた巨木に上り、幹や枝を切り出すお仕事をされている方です。後継者不足の中で、一人の職人熊倉純一さんのインタビューが掲載されていました。何百年も生き続けた巨木にチェーンソーを入れる時には、木に声を掛けるそうです。「これまでお疲れ様でした。これから、あんたが良い板や柱になれるよう切りますよ」と、そうすると、木から「おまえにだったら切られてもいいよ」と聞こえるような気がするそうです。危険を伴う大変なお仕事で、「自然破壊」だなどと、倒木の起因も知らずに非難を浴びることもあるそうです。でも、空師さんには、いつもチェーンソーの刃を当てる時、竜血が見えるのではないでしょうか。この暑い季節であろうとも、どこかで命絶えようとしている木にメスを入れられておられるのでしょう。

「朽ちし木に 空師の汗は 後光射す」

私はソトコラ島の画像から取り上げてみましたが、あの何とも言えないユーモラスな雰囲気は生かせていません。

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Quand un arbre tombe, on l’entend ; quand la forêt pousse, pas un bruit.