切り切りMme

自作の切り絵を紹介する

型染め型ー烏瓜

「ふわふわと泡かと咲けり烏瓜」(松本たかし)

「もじゃもじゃの糸のごとく咲く烏瓜」(黒澤登美枝)

「絹糸のもつれや烏瓜の花」(池田かよ)

烏瓜の花を見られたことがありますか?夏の夜に咲きます。実は葉も枯れ落ちた冬景色の中に真っ赤になって残ります。烏の枕とよく言いましたが、狐の枕とも言っていたそうです。

夏の夜に咲く花といえば、月下美人が思いつきますが、他には夕顔でしょうか。この烏瓜にしても、どれもが見事なほどに真っ白な花です。寺田寅彦氏が「からすうりの花と蛾」という作品で、この白い夜の花について語っておられるのを、少し引用しましょう。

≪この花は昼間はみんなつぼんでいる。それが小さな、かわいらしい、夏夜の妖精(フェアリー)の握りこぶしとでもいった格好をしている。夕方太陽が没してもまだ空のあかりが強い間はこのこぶしは堅くしっかりと握りしめられているが、ちょっと目を放していてやや薄暗くなりかけたころに見ると、もうすべての花は一ぺんに開ききっているのである。スウィッチを入れると数十の電燈が一度にともると同じように、この植物のどこかに不思議なスウィッチがあって、それが光のかげんで自働的に作用して一度に花を開かせるのではないかと思われるようである。この花は「花の骸骨」とでもいった感じのするものである。遠くから見ると吉野紙(よしのがみ)のようでもありまた一抹(いちまつ)の煙のようでもある。手に取って見ると、白く柔らかく、少しの粘りと臭気のある繊維が、五葉の星形の弁の縁辺から放射し分岐して細かい網のように広がっている。からすうりの花がおおかた開ききってしまうころになると、どこからともなく、ほとんどいっせいにたくさんの蛾(が)が飛んで来てこの花をせせって歩く。無線電話で召集でもされたかと思うように一時にあちらからもこちらからも飛んで来るのである。これもおそらく蛾が一種の光度計を所有しているためであろうが、それにしても何町何番地のどの家のどの部分にからすうりの花が咲いているということを、前からちゃんと承知しており、またそこまでの通路をあらかじめすっかり研究しておいたかのように真一文字に飛んで来るのである≫

私は白い花が一番好きで、庭もあくまでも白を基調にしたいのですが、どこからか赤や黄色や桃色の花が汚染しがちです。この繊細な花の白さも好きでやってみましたが、寺田氏の描写とは縁遠くなってしまいました。

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Au fond de la nature pousse une vegetation obscure; dans la nuit de la matière fleurissent des fleurs noires.