切り切りMme

自作の切り絵を紹介する

染め布:ハンカチ②

「思ひ出の遠きものより風入るる」(小野島淳) 

虫干しと言えば、梅雨明けの土用干しを指し、季語は晩夏7月だそうですが、うちではいつも運動会の太鼓の音がし出したら徐に重い腰を上げては部屋中に干したものですが、湿度の最も低い時季と言えば、寒の時分も最適だと聞きやってみようともしましたが、中々果たせぬままに過ぎ去り、さて何年虫干しをしていないことやら。箪笥の扉を開けて、風入れすらも忘れてしまっています。

「虫干や裏地なまめく紅絹の色」(阿形公枝)

鴨居に竿を掛けて、たとう紙から出して吊るしていきます。部屋中が樟脳の匂いに包まれます。風に着物が揺れると、八掛との色併せがよく見え、その配色の運び方に粋さが伺える着物にふと袖を通したくなります。八掛は着物の裾の裏につける布です。前後の見ごろの裾裏に4枚、衽の裏に2枚、襟先の裏側に2枚つけるので、合計8枚掛けることから、八掛と言うのだそうです。表地を傷めないように保護する為、滑りをよくする為でもありますが、捲れて目に留まることもあり重要な役割りも果たしています。この八掛との色併せを見るのはこころが跳ねます。

「虫干しや一枚づつに袖通し」(古川春美)

一枚一枚を見ながら、祖母と母が向かい合って縫い物をしていた姿が浮かびます。

「虫干しや嫁しても同じ紋所」(小山直子)

嫁入り道具に入れる着物の紋には、嫁ぐ先のではなく実家の紋を入れるのだと聞いた事がありますが、今更に仕立てるとなるとどうなのでしょうね。着物には本当に難しい仕来りがあるようで、ついつい敷居が高くなりますが、引きずって離さない家という重みが伺えます。それにしても、昨日、天皇陛下フィリピンご訪問での晩さん会の様子が放映されているのを見ましたが、フィリピンの男性の礼服というのも素敵ですね。「バロン・タガログ」(Barong Tagalog)というのだそうです。バナナの葉やパイナップルの葉の繊維で織り上げた絽のような薄手の生地で、形はプルオーバー型の長袖シャツ、両サイドにスリットが入っていて、胸の部分を中心に刺繍が施されていて、ズボンからシャツの裾を出して着る礼装なのだそうです。晩さん会全てが白で覆われたように清楚な感じで、黒を礼装とした日本の色調とは違い清涼感がありましたが、やはり暑い国ならではなのでしょうか。

「留袖の出番待つ日々風入れる」(竹内悦子)

風を入れてカビさせないようにしないといけませんが、バナナ生地の呂ならカビの心配も要らないのでしょうか。ちょっと羨ましくもあり、いつかどこかで見つけてみたい素材です。陛下も高齢とおなりになられましたが、こうやっての慰霊への供養をされるお姿には、私達戦後世代の者達への記憶を風化させない強い思いがおありなのだと、改めて犠牲になられた数多くの人々への声を、薄い白地の呂の中に耳を澄まさねばなりません。

 

どんな条件の不具合があるのか、染め斑が出来てしまいます。改善の為にもデータの記録が大事です。

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Le barong tagalog est la chemise nationale aux Phillipines, confectionée en jusi, de préférence de couleur blanche et semi-transparente.