切り切りMme

自作の切り絵を紹介する

ハンカチ染め②

「蕗剥けばそばに母居る心地かな」(高重京子)

姉から蕗の佃煮を貰い受けました。鳥取の山野までドライブして採取して来たそうです。実にシンプルで、灰汁抜きをした蕗を醤油だけで煮詰めたものですが、口に入れると、昔一家総出で山野まで弁当持ちで摘みに毎年この時期になると行った風景が蘇ります。弁当は沢庵を芯にした巻き寿司。もうその山野も今では住宅街になっているのでしょうね。

「蕗取りに足元濡らす沢づたひ」(村上安代)

いつでしたか叔母一家も同伴して、まだ幼かった従妹が沢に滑り落ちた事がありました。蕗は湿地に繁茂するので、私達は山野を分けて水辺を捜して進みます。へとへとに疲れた頃に、漸く蕗が密集する所に辿りつくのでしたが、靴にズボンの裾まで泥だらけ、体までが冷え切るのでした。アラジンのタータンチェックの魔法瓶の茶色色のお茶が美味しかったこと。ポリポリ音を立てた沢庵巻きの酸味と共に従妹の泣き声が耳を澄ますと聞こえてきそうです。

「蕗摘みし指の汚れの取れぬまま」(稲畑汀女)

蕗は灰汁が強く、手がどす黒くなり、中々指紋の中に沁み込んだ黒ずみは洗っても取れません。

「蕗を煮て来て手の匂ふ参観日」(加美明美)

醤油煮にするのは山蕗で、茎がそれほど太くないので筋を剥くことはありません。スーパーなどで売られている太い黄緑色の蕗は筋を剥かないといけませんが、私は湯がく前に剥きますので、やはり手が汚れます。ついつい慌てて買い物にそのまま飛び出すと、手を引込めないといけなくなります。午後の参観日、ママは急いで服をよそ行きに着替えることはしても、家を飛び出して教室の壁に立ってみれば、蕗の染みついた匂いに気付く始末で、後ろ手になる姿、いい句ですね。

「蕗を剥く己れを剥いてゐるごとく」(鈴木節子)

 

山菫の模様は私のデザインですと言ったら、「やっぱりね。若冲の天井絵の花は空白の使い方が絶妙。あんたのはやり過ぎ、ごちゃごちゃ」だと指摘を受けました。確かに息を抜くところがないです。とうやったら、一皮剥けることやら。

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L'orateur prolixe, comme la mèche d'une chandelle, perd sa clarté en s'allongeant.