切り切りMme

自作の切り絵を紹介する

型染めを作品化ー⑥

「春袷白き手にある躾糸」(今泉貞鳳)

義母の部屋を片付けておりました折に、綛(かせ)巻きになった躾糸が出て来ました。その量の多さに何だかこれで生涯凌げると思うと、とても幸せな気分になりましたが、さてこの躾糸なるものを知っている人はどれだけ居るでしょうね。ましてや、かせくり機なる糸巻き機も見たことはないでしょうね。そういえば、「ダブルクリックって?」「セルって何ですか?」と、システムエンジニア志望者がそんな事を聞くのだそうです。う?何?パソコンを使わないでSNですかっと思ってはいけません。最近の若者はスマホですべてを済ませるのだそうです。何とも情報科学の進化の速さには驚くばかりです。阪神大震災の頃は、公衆電話に長い行列が出来たのがついこの間の事のように思うのですが、それから携帯が普及し、漸く追いついたかと思っていましたら、今はスマホ。十代のスマホや携帯端末によるネット利用率は80%以上。それに対してパソコン利用56%まで急落しているのだそうです。キーボードなるものを知らないというのですから、綛巻き毛糸を両手に掛けさせられて、手際よく毛糸玉にしていく母に「ほら、しっかり手を張らないと」と叱られた光景が描ける人は居ないのでしょうね。

「行きずりの私語も柔らか春袷」(大津信子)

フラリーマンという種族をご存知でしょうか?家路に真っすぐに足が向かず、駅のホームや喫茶店で一息つかないと家族の下にたどり着けないのだそうです。一人暮らしというものを実はしたことがない身の私には、偉そうなことは言えないのですが、長い独り暮らしをし過ぎていると、人の居る家というのは重荷なのでしょうか。キーボードのない画面だけに心を落ち着かせ、生の付き合いリア充をも持たなければならないとは、元々、これも「働き方改革」の副産物かと思うと、住みやすくなるはずの技術革新も頭をもたげるばかりです。

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銘仙名古屋帯に、絹薄地で菫模様を型染めしたものを縫い合わせてみました。薄生地を縫い合わせるのに欠かせないのが躾ですが、帯生地に躾をするのは、針が入りにくく、ついついマッチ針で押さえるだけにしていますが、仕上がりが綺麗になりません。一手間を惜しまぬ作業の大事さ痛感しています。

“Nul bien sans peine.”